その男の子はいつも一人でした。
男の子は一人でも寂しくありませんでした。
なぜなら男の子は生まれたときからひとりだったからです。
帰る家もなく暗く寒いアスファルトのみちをあるきました。
とちゅうで、どこかの家からか楽しそうに笑う声が聞こえてきました。
しかしそれさえも男の子にとって意味を持ちませんでした。
にゃあ
という声が聞こえたのは真っ黒の空から青白い雪が降り始めた頃。
不思議な声に辺りを見回すと、そこに一匹の美しい白い生き物がいました。
男の子はそれを何度かみたことがあったけど、名前を知りませんでした。
だれも教えてくれなかったからです。
その生き物は男の子の傍へよってきてもう一度
にゃあ
と
いいました。
男の子はその生き物の暖かさに驚きました。
生き物は男の子をじっと見つめます。
男の子は生き物に手を伸ばしました。
寒かったからです。
寒いも暖かいも、男の子にとって初めての感覚でした。
生き物は手が届くまえにさっと逃げていきました。
逃げた先に同じ生き物がたくさんいて、その生き物を待っていました。
同じくらいの大きさのが一匹と、もう少し小さいのが何匹かいました。
さっきまで傍にいたその生き物は、男の子の方を一寸だけみつめ、去っていきました。
ほかの生き物も去っていきました。
男の子はさっきまで寒いも暖かいも感じませんでした。
何も、何も感じませんでした。
それなのに、胸がすごくいたくなって、びっくりしました。
いたいと思うことも初めてでした。
目から水が降ってきて、男の子のほおを濡らします。
どうして目から水が出てくるんだろうとおもいながら、男の子は生まれて初めて声を出しました。
「にゃあ」
つぎのひ、しろいゆきにかこまれうれしそうに、かなしそうにねむっているおとこのこをだれかがみつけました。